春にイライラ&悶々とする理由〜春養生①〜

こんにちは。本日東京はなんと19℃まで気温が上がるそうですね。

今回からは3回に分けて春の養生を書きたいと思います。今日は春の不調で多い情緒や気持ちの揺らぎについて。

春は植物の枝や芽がニョキニョキと伸び始め、冬眠していた動物たちの動きは活発に。これら動植物の動きが活発になるのは大地の陰陽のエネルギーーバランスが転じて起きるものと考えられています。

秋冬は”陰”のエネルギーが充実する季節、春夏は”陽”のエネルギーが強くなり充実する季節。春は陰から陽へとエネルギーバランスが転換する季節なのです。体の中にもこれと同様のことが起こり、陰陽転換についていけない体が調子を崩しやすくなります。

春養生の1つめは”陰”を増やして、”陽”が強くなりすぎぬよう抑えること。これには”陰”を補う”滋陰”の生薬、食材を多く摂るのが良いでしょう。

滋陰の食材…貝類、イカ、山芋、にんじん、枸杞子(クコのみ)など

”気”を全身にくまなく巡らせる役割を担当する”肝”という臓。春は急に陽が強くなることで動きが活発になり、体を動かすのに必要な”気”がたくさん必要となります。これに合わせて肝は一生懸命働きますが、やはり段々と負担が積み重なり疲れ、気の巡りのコントロールが難しくなります。すると”気”が激しく頭に向かって駆け登ったり、停滞したりと気の巡りが乱れてきます。気は感情や心とも関わっているので、気が乱れれば感情や心も乱れていきます。

気の激しい上昇がイライラを生じさせたと思ったら、今度は気の停滞が起こり悶々とした気持ちが生じる…と、情緒が不安定になりやすい春の養生の一つは気の巡りをスムーズにすること。

春養生の2つめは”肝”を落ち着かせる”平肝”、気の巡りを調える”理気”の生薬や食材を積極的に摂りましょう。

平肝の食材…セロリ、トマト、せりなど / 理気の食材…三つ葉、グレープフルーツ、かじき、陳皮など

イライラする時には酸味のあるものを、悶々とする時にはミントやネギ、しょうがなどの香味を摂りましょう。

『乙姫の宝箱』

心を落ち着かせる漢方茶でも手軽に春の養生ができます。また少しだけ早起きをしてみたり、少しだけ歩く時間を長くしたり、軽い運動をすると気の流れが良くなります。私も帰宅時に最近は一つ手前の駅で降り、一駅分歩いています。            国際中医薬膳師 田中奈津子

漢方コラムは第一、第三土曜の午後に更新しています。次回は3月19日の更新です。

全ては”気”がなきゃ始まらない!②4種類の”気”の働き

筆者は最近は家に詰め、黙々と仕事を進めておりました。昨日あたりからなんだか呼吸が浅く、息はしているけど深部まで届いていないような心地よくない状態でした…あーこれは体が”宗気君”を欲しているな…と。外に出てフレッシュな空気を思いっきり吸い込もう!と、先ほどォーキングをして参りました。さて、宗気君とは…

前回は”気”をキャラクター化して4種類ある”気”の分類をお伝えしました。今回は気にどんな働きがあるのか、4種類ある気はそれぞれどの働きを担っているのかを詳しく見ていきましょう。

気の働き(作用)は全部で5つあります。

1.推動作用(すいどうさよう)…内臓を動かし、血をめぐらせる。潤いを運び、古い水分を排泄する。※血や潤いは自ら動けないので気に運んでもらいます。

2.温煦作用(おんくさよう)…体を温めて体温をキープする。※冷え症の方は”気”が足りない方が多い。

3.防衛作用(ぼうえいさよう)…体の外側にバリアを張り、病原となる悪い物の侵入を防ぐ。=抵抗力

4.固摂作用(こせつさよう)…内臓を定位置にキープ。また汗や尿などの排出物が出過ぎないように調節する。

5.気化作用(きかさよう)…飲食物を内臓の働きに適した形状に変化させる。例)飲食物を”精”という栄養源に変え、その後、気、血や潤いへと変化させる。老廃物を尿や便にかえて排出しやすくする。=代謝機能

6.営養作用(えいようさよう)…全身に栄養を行き渡らせる。

4種類ある気=四気(しき)は上記の5つの働きのどれかを持ち、その働きを果たす事で私たちの生命活動を維持してくれています。では四気の持つ働きを見てみましょう。

元気君は上記の5つの働きの全てをこなすパーフェクトボーイ。彼は生命活動の起点、原動力です。病気、出産の大仕事をやり遂げた時には頑張りすぎてしまうのでエネルギーがダウン。体が弱っているなダメージを受けているな…と感じた時には元気君が保管される『腎』に良い海老やうなぎに豚肉、栗、黒豆などを食べて回復を。

宗気君は推動作用を持っていて、呼吸と心拍や経絡(気、血の通り道)に流れる気、血の巡りを指揮しています。彼がお疲れの時は呼吸が浅くなったり、血行が悪くなります。そんな時には深呼吸で外の気を取り入れたり、宗気君が作られる『脾・肺』に良い山芋、アスパラ、ぶどうを多く摂りましょう。

営気君は気化作用、営養作用を持ちます。自分(営気)と津液(潤い)を組み合わせて”血”に変化させます。また体に栄養を行き渡らせて疲労回復に一役。寝ても疲れが取れない時、お肌が乱れる時には営気君が足りていない時かも。営気君が作られる『脾』に良いイワシ、うに、豆類、芋類などを積極的に食べましょう。

衛気(えき)君は防衛作用、営養作用、固摂作用、温煦作用と4つの作用をフルに使い体を守ります。防衛作用で外敵を跳ね返し、営養作用で肌の表面に潤いバリアを、体に入ってきてしまった外敵を発汗で追い出す。そして、体温を維持して内臓の免疫を上げていきます。衛気君は『脾・肺・腎』で作られます。先の3人で挙げた食物をバランス良く摂り、いつでも臨戦体制を。

どうでしょうか、前回と今回のお話で気というものが少しご理解いただけたでしょうか。目には見えない気ですが、これがなきゃ命は始まらないのです。病は気からの気はまさに”気”のこと。健康も美もレジャーや趣味を楽しむこともすべてこの気がなきゃ始まらないのです。

歳を重ねるにつれやはり気は作りづらく、保持しづらくなってきます。食べ物や暮らし方に少し気をつけながらいつまでも”気”が満ち溢れ、イキイキとしたおばあちゃんになれたらな…と筆者は考えております。

国際中医薬膳師 田中奈津子

白金癒淹漢方コラムは毎月第一、第三土曜日の午後に更新しています。次回は3/5(土)更新です。

全ては”気”がなきゃ始まらない!①気の種類

こんにちは。立春が過ぎましたがまだまだ外は寒いですよね。春の暖かさを感じるのにはもう少しの辛抱が。。

今回と次回の2回に渡り”気”のお話をしていこうと思います。

漢方といえば”気”。この気が生きていく上で全てのことに必要になってきます。栄養を作る、血を作る、内臓を動かす、血を動かす、内臓を定位置にキープする、発汗を調節する、体を温める、老廃物を出す…ざっと気の働きを並べましたが気の役割はこれだけにとどまりません。目に見えませんが、生きるための最も基本的な物質と考えられています。=エネルギーと考えるとわかりやすいですね。

まずは気の種類を知りましょう。イラスト使って擬人化してみました。

気の種類

元気(げんき)…読んで字の如く生きることの元となる原動力です。これは親から引き継いだものと、食事から得られた栄養で作られた気です。これは五臓の”腎”というところで出番の待機をしています。体の内側を温め、内臓の動きを活発にする気です。

活き活きしているアクティブな元気君

宗気(そうき)…これは発声、気と血の巡り、体の循環リズムや手足の動きなどに関わります。呼吸で吸入した空気と食事から得られた栄養が結びついてできた気です。待機場所は胸のあたり。

乱れは許さないしっかり者、宗気君

営気(えいき)…営養(栄養)を豊富に含み血と共に巡り、身体中に栄養を届けます。食べたものから作られ血液になります。

食べて栄養つけよ♡肌艶男子営気君

衛気(えき)…用心棒のように私たちの体を悪いものから守ってくれる力です。気の中で最も激しく動き回ります。食べたものから作られます。体の内側と外側を温め、毛穴の開閉、汗の調節、体温をキープすることが役割です。

体は俺が守る!衛気君

これらの気がそれぞれの役割を果たすために、体の中を昇ったり、降りたり、出たり、入ったりして私たちの生命活動を司っています。私たちが健康な毎日を過ごすには①から④の気を偏ることなくまんべんなく作り、保持していくことが大切です。

不調別、気を増やす食材

力が出ない、老け、お腹や腰が冷える、月経不順を感じる方は、①元気を増やしましょう。五臓の腎にて貯蔵、待機しているため腎を元気にする”補腎(ほじん)”、気を増やす”補気(ほき)”の食材をとっていきましょう。

ex:くるみ、黒胡麻、えごまの葉、いくら、かつお、すっぽん、粟(あわ)、しめじ、なめこ、さつまいも、うなぎ…

呼吸が浅い、血行が悪い、水分代謝が悪い、動悸、息切れを感じる方は。②宗気を補いましょう。呼吸と食べ物からなるこの気には肺と脾の動きが不可欠です。肺の気を増やす”補気”、脾をしっかりと動かしていく”健脾”の食材を多くとりましょう。

ex:山芋、アスパラ、きくらげ、ぶどう、ココア、納豆、カブ、米類、豆類、かぼちゃ、小松菜、りんご、鯛、うに…

顔の血色が悪い、肌が乾燥する、疲れやすい、めまい、忘れっぽいなどを感じる方は、③営気を増やしましょう。食べたものから作られるので②と同じく”健脾”の食材をたくさん食べましょう。

ex:米類、豆類、カリフラワー、にんにくの茎、ひらたけ、アボガド、ローズマリー、なつめ、栗、いわし、牛肉…

足がつりやすい、ぎっくり腰、冷え、発汗の異常、低体温、風邪をひきやすい方は④の衛気を増やしましょう。こちらも食べたものから作られるので上記の”健脾”の食材を参考にしてみて下さい。

食事と合わせて漢方茶をいただくことで気の生成をより活発にしていきましょう。

①元気を増やすには、雪娘のぬくもり

②宗気を増やすには、織姫の恋+草原の人魚

③営気、衛気を増やすには、草原の人魚

野菜、果実、お肉、お魚…食べ物から気を得るということ=大地から気をいただくということです。

大地の恵みに感謝し、食べる前に一言大地にお断りを入れる『いただきます』という言葉。日本の美学の根幹、感謝、謙遜、気遣いがあらわれた言葉ですよね。大地の恵みの力を借りて”気”を作り、巡らせて健康になり、そのご恩を大地に返せる行動を心がけて日々暮らしていきたいなぁ…と、考えている筆者です。

国際中医薬膳師 田中奈津子

☆漢方コラムは毎月第一土曜、第三土曜の午後に更新しています。次回は2月19日(土)午後更新です。

冷えが“むくみ”を呼んでくる!?〜”津液”コントロールでbodyすっきり〜

こんにちは。刺すような寒風に怖気づき引きこもっておる私です。

これ良いぞ!という防寒グッズがあれば是非お教えくださいませ。

さて今日は“むくみ”のお話。お肌のお悩みと並び、悩まれている方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。むくみは“水腫”と漢方中医学では呼ばれています。むくみ(水腫)の原因は津液の生成、運搬、排泄という水分代謝のサイクルの乱れにあります。ではこのサイクルがなぜ乱れたのか。

津液は自分で動くことができません。”気”に各所へ運んでもらいます。この気の乱れがむくみの本当の根本的原因です。次になぜ気が乱れるのか。冷えです。冷えは内臓のエネルギーを奪い、動きを悪くしていきます。気を作る臓『脾』、津液の量を調整する『肺』、排尿の要である『腎』これら津液サイクルの駅となる臓の働きが低下するのです。

微妙な冷えを秋頃から感じつつも特に温活などせずに今に至る方はこのむくみが下半身に顕著に出ていませんか。

むくみが出てきたら、飲食物から気を作る”脾”を元気にしていきましょう。脾を元気にするにはお米、お豆が一番です。運動をして発汗させるのも大切です。更に余分な水分を尿として排出させる”腎”を温めて活発に動くようにしていきましょう。くるみやエビなどをおかずに取り入れてみてください。また尿の排出をサポートするとうもろこしやパクチー、黒豆も多く食べると良いですよ。少し控えた方が良いものは、生ものやひんやりした食べ物です。脾を弱らせてしまうので加熱した温かい食べ物を心がけてください。

また、忙しく食事の組み合わせを考えたり、食事を作ったりできないときには当店の漢方茶をぜひ試してみてください。温めるシナモン、排尿を促す黒豆、脾や腎を温めて調えていく生薬がブレンドされています。

甘茶でほんのり甘みをつけています。ミルクで煮出しても美味しくいただけます。

シナモンの甘い香りはミルクと相性抜群です。

どの不調でも長引かせるとやがて大きな病へと繋がっていきます。病院行くほどでもないけどちょっと…体に少しでも違和感を感じたら当店へ。資格を持つカウンセリング経験豊富なスタッフがご相談に乗ります。

ご自分の体質に合わせた普段のちょっとした飲食への気づかい、年齢やライフスタイルに合わせたちょっとした運動が実は一番堅実な健康法です。10人いらしたら10通りの健康づくりの方法があります。ご自分のためだけのオーダーメイドの健康作りを白金癒淹で探してみませんか。

                                       国際中医薬膳師 田中奈津子

白金癒淹漢方コラムは毎月第一、第三土曜更新。次回は2月5日(土)更新です。

お屠蘇(とそ)で願う無病息災

明けましておめでとうございます。

2022年もどうぞよろしくお願いいたします。

元旦。皆さんはいかがお過ごしでしょうか。私は仙台にておせち作り、お雑煮作りを終えひと段落。ストーブに当たりながら初売り広告に目を通していたところです(笑)

さて最近ではなくなりつつあるお正月風物詩”お屠蘇”。お酒やみりんに生薬を漬け、元旦の朝にいただきその年の厄払い、邪気払いをします。これは中国から伝わってきた風習です。

飲むと体が温まり、血行が良くなり、元気が満ちてくることから古代中国でお酒は娯楽ではなく薬として重用されていました。”医”の旧字体、”醫”では漢字の下のつくりは酒という字なんですよ。

お屠蘇に漬ける生薬は白朮、山椒、桔梗、肉桂、防風、陳皮…。お腹を温め、体に元気を呼び起こし、咳や痰を鎮めて呼吸を安定させる生薬を組み合わせています。病気予防とりわけ風邪予防、風邪初期の症状緩和に◎。これをお酒と共に飲むことで巡りをスムーズにし、生薬が各所でその働きを十分に発揮できるようになります。

風邪が大きな病気を引き起こすきっかけになったり、持病をより悪化させたり…と、風邪は万病のもとと言われるよう病気予防、健康維持にはまず風邪をひかない体を作ることが大切です

お酒が苦手…という方には当店の漢方茶をお屠蘇がわりに飲んでみませんか。お屠蘇と同じく桂皮がブレンドされ、白朮と似たハトムギがブレンドされた「雪娘のぬくもり」がおすすめです。

大切な人の無病息災を願うお屠蘇という温かなお正月の風習がずっと先まで受け継がれていきますように…

国際中医薬膳師 田中奈津子

本年も変わらぬご愛顧の程よろしくお願い申し上げます。

白金癒淹漢方コラムは毎月第一、第三土曜日更新です。次回更新は1月15日です。

本年も変わらぬご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。