『春の仕上げの養生』”脾”に元気を補い健やかな春を…

こんにちは。開花宣言が出され、桜の満開が待ち遠しい毎日です。

今回は『春の仕上げの養生』についてお話ししたいと思います。春が終わる前にしっかりと調えていきたいのが”脾(ひ)”。

脾は食べたものから”気”(エネルギー)や血(けつ)、水(すい)を作り、不要なものを排泄へと促す臓です。体の真ん中に位置することから”中焦(ちゅうしょう)”とも呼ばれています。

前回、春特有の悪い気”風邪(ふうじゃ)”が〈肝〉の動きを激しく乱してしまう…というお話をしました。肝と脾は相克(そうこく)関係という、上司と部下の様な関係であると漢方では考えられています。肝は時に優しく、時に厳しく…脾を監督しているようなイメージです。しかし春になり肝が乱れてしまうと脾への監視が激しくなり、脾は萎縮して動きが小さくなってしまうのです。肝が乱れると二次被害的に脾にも悪い影響が…

脾の動きが小さく、弱くなると気や血を作るペースが落ちてしまいます。気が不足すれば体がだるく、重くなり、お通じも力なくゆるく…また、血や水が不足すれば目まい、乾燥、月経にも影響を及ぼしますので漢方、薬膳で食生活に工夫をし、春のうちにしっかりと脾を調えていきましょう。

脾にエネルギーを補い栄養づくり、消化活動を活発にしていく【健脾】の食物はなんといっても”お米”です!黒米、米麹、玄米も同じく脾に力を与えます。少し冷えのある方はご飯に餅米を少しブレンドして炊くと良いでしょう。

あとは芋類に豆類も◎。じゃがいもや大豆は脾の中でも特に大腸に元気を与えるのでこの時期に便通が弱くスッキリしない方、お腹がゆるい方にとても良い食物です。

【健脾】の食物にはオレガノ、陳皮、八角、ナツメグなど【理気】の働きのあるハーブやスパイスを合わせると脾に集まった元気、エネルギーを効率よく巡らせて脾の活動を安定させます。

脾にエネルギーを運び、この時期の弱った胃腸を優しくリペアする当店の漢方茶『草原の人魚』はお湯を注ぐだけで手軽に『春の仕上げの養生』ができますよ。

脾の疲労による食欲不振、体の倦怠感やだるさに抜群の働きをする高麗人参をメインに、先に紹介した脾に気を補う玄米や黒豆がブレンドされています。玄米の香ばしさに心がとてもほっとするお茶です。

冬の間に溜まった不要なものを脱ぎ捨て、風でゆらされた気の巡りを調え、気、血、水を作る臓をしっかりと調える…全③回に渡ってお伝えした漢方養生を食事やお茶でゆったりと調えて春を健やかに満喫してくださいませ。

次回更新は4月3日(土)『理想肌に東洋医学でアプローチ!』あなたに必要なのは潤い?ハリ?

『春の真ん中の養生』”風”に吹かれて揺らぐ気の巡りに…

こんにちは。暖かくなり過ごしやすい気候になってきましたね。皆さん元気にお過ごしでしょうか。

前回お話しをした春の初めのデトックスを終えたら、次は『春の真ん中の養生』に移っていきましょう。

春一番、花吹雪、花嵐など春をあらわすのに風の動きを用いている言葉が多くありますよね。このことから春といえば風…というイメージが古くから日本に根付いていることがうかがえます。中医学から日本で発展した漢方においても春と風には深い関わりがあると考えられています。

漢方ではそれぞれの季節ごとに体調を乱す”邪気”というものがあると考えられています。免疫、抵抗力などが落ちていると邪気が隙をつき体内に。春の邪気は気の巡りを乱す”風邪(ふうじゃ)”というもの。

※風邪(ふうじゃ)と風邪(かぜ)は別。風邪(かぜ)のことを漢方では感冒(かんぼう)といいます。

この風邪(ふうじゃ)が体に侵入してくると”気”をスムーズに巡らせて情緒を安定させる”肝”という箇所を煽(あお)り、捲(まく)し立て、気の巡りをしっちゃかめっちゃかにしてしまうのです。それにより怒りっぽくなったり、塞ぎ込んだり、ソワソワと落ち着かない、あとは衝動買いなど普段ではあり得ない行動をとってしまう(ドキッ!)…思い当たる節ありますか?

春の真ん中の養生は”疏肝理気(そかんりき)”。肝を落ち着かせ、気の流れを調える事。

肝の動きを落ち着かせる食材を少し多めに食べてみてください。セロリ、トマト、ピーマンなどの野菜、魚介類ではクラゲなどが良いでしょう。これらの食材に気を調えるチャービル、三つ葉、グレープフルーツ、ライチなど香りの良いものを合わせると相乗効果でより良い働きに。また、春にため息が多くなったり、胸のつかえを感じる方は日本の山椒をお料理にちょこっと効かせるのがおすすめです。

白金癒淹でも肝を落ち着かせて春の不調を緩和する漢方茶をご用意しています。

★織姫の恋★肝の不調からくる気の乱れによる目まい、頭痛、目の充血を緩和する生薬”桑葉(そうよう)”をメインにブレンドし、肝をいたわり滋養する生薬、枸杞子も加えています。緑茶のような爽やかな味わいを楽しめます。

漢方の源流である中医学では、体と心を伸びやかにさせてあげる事が春を上手に過ごす一つの養生法として伝えられています。ゆったりと着られるお洋服で過ごしたり、ヘアスタイルをゆるりとほぐしたり、嫌なことはできる限り避けたり…体や心をあまり締め付けずに伸びやかに春を過ごしてみて下さい。

国際中医薬膳師 田中奈津子

次回は『春の終わりの養生』〜脾に元気を補い健やかな春を〜3月20日更新です。